2021年2月27日発売の「異世界カフェをまったり経営する予定が、エロくて甘いキスに翻弄されています。」を紹介します!後半はネタバレを含むので要注意。
- 転生ヒロインを陰から温かく見守る家令
- 少しずつ距離を近づけていくヒーローヒロイン
- 性描写は少なく登場人物の心情が丁寧に描かれている
あらすじ
アンナが前世の記憶を思い出したのは老男爵と結婚式を挙げた後の初夜。サヴィニャック男爵は高齢のため亡くなりました。アンナは20歳にして、結婚初日に未亡人となります。サヴィニャック男爵には跡継ぎがなく、遺産と男爵位をアンナが継ぎその資金で”念願”のカフェを開店します。
アンナの前世は29歳の事務員で、カフェを持つことが夢でした。せっかく貯めた開店資金は詐欺にあい失ってしまい、さらに永村という偶然出会った男性の自殺に巻き込まれて亡くなってしまいました。サヴィニャック家の家令のエイブラムは前世で杏南を巻き添えにしてしまった永村で、本来死ぬはずでなかった彼女への贖罪と彼女を幸せにするために温かく彼女を見守り、幸せになるように陰からフォローをしています。
アンナが生まれ変わった時に特殊能力「絶対味覚」という能力を持っていました。それは手をつなぐことで相手が食べたいと思っている料理のレシピが分かるという能力で、それをもとに料理の再現をしています。その裏メニューで依頼された料理を作るための食材(ハーブ)を探すために、カフェの隣にある人が住んでいない屋敷に忍び込みます。そこには薬草があるという話を学生のお客さんから聞いたから。
ところがその屋敷には人が住んでいて、忍び込んでいたアンナが見つかってしまいます。レオナールに咎められ、忍び込んでしまった経緯と「絶対味覚」について説明すると、あるスープを再現すれば屋敷へ入ること、食材の調達をすることを許可するという条件をつけられます。そのスープを再現するため、アンナは毎日レオナールの元へ会いに行くようになります。
登場人物
主要な登場人物を紹介します。以下、書籍のキャラクター紹介からの転載です。
アンナ・サヴィニャック(早乙女杏南)
高齢のサヴィニャック男爵の後添いとして20歳で嫁ぎ、初夜に夫を亡くした未亡人。前世は早乙女杏南として生き、29歳で死亡し異世界転生した。夫の死後男爵位を継いだが、元は豊かな平民出身。遺産を元に前世の夢だったカフェを回転させた。
レオナール・デュランベルジュ
アンナが開店したカフェの隣にある謎の屋敷にひっそりと住む、美しい青年。月のように輝く金色の長い髪と、赤みがかった瞳で妖艶な色気をまとっている。隣の庭にこっそり侵入したアンナを見とがめキスをした上に、ある条件を出してくる。
エイブラム(永村)
サヴィニャック男爵家の有能な家令。ロマンスグレーに口ひげのイケオジ。実はその正体は、杏南を巻き込んで異世界転生してしまった永村という壮年の男性。今世ではアンナの幸せを願い手助けをしている。
陰から静かにアンナを見守り、ときにはフォローしてくれる優しいおじさまです。
マルグーニ
カフェの近くにあるアドレア魔導学院の教師。厳つい体型で眼鏡に髭と全体的に熊っぽいが、生徒には人気がある様子。カフェ開店当初に来店し、裏メニューも宣伝してくれた常連客の一人。
面倒見が良い先生でレオナールのことを気にかけています。
アンナとの仲が進展するといいなぁと願っているみたい。
パトリック
アンナの生家である裕福な商会を継いだやり手の商人。かなり腹黒いところもあるが、爽やかな見た目で顧客のマダムたちにも人気である。また、実は妹想いでもあり老男爵に嫁がせてしまったことを後悔している。
目次
- プロローグ 虚空で空腹な日々
- 第一章 まずはBLTで、お客様集めを!
- 第二章 レオナール・レオタールとベーグルサンド
- 第三章 熱いポットパイで心まで温めて
- 第四章 彼の秘密にハニーマスタードを添えて
- 第五章 厚焼き玉子より甘くて、キスより切ない
- 第六章 貴方だけに、クロックマダムを
- 第七章 ドラジェより甘く蕩ける夜
- エピローグ 異国からきた手紙
- あとがき
もこもこの所感
最後に性描写が入るのでTLですが、全年齢版で出しても全然素敵な内容ですが、書籍化に伴い今は公開されていないようです。中高生くらいの年代に読んでもらいたいなぁと思うストーリーだったので残念……
感想(ネタバレ含む)
読みながらストーリーの展開が分かるぞと思ったら、昨年連載しているときにオンタイムで読んでいた作品でした。レオナールの家庭など暗い設定もありますが、ストーリーの中で嫌になるような描写や暴力的な表現はあまりなく最初から最後まで楽しく読むことができました。(一部獣人に対する偏見についての描写はありますが)
金色の狼とアンナ、レオナールとアンナの2つの接点があるのですが、狼が自然な姿でゆらゆらと尻尾を揺らす姿など穏やかにすぎる時間が心地よく感じました。レオナールはスープを理由にアンナに接しますが、本能的に最初から惹かれていたんだろうなぁ。
にしても、魔力のためにレオナールの母親と結婚したのに、お姉さんを厄介者払いし(ご自身が興味なかったのでしょうが)獣人の体質のこと、お姉さんの手紙を渡さなかったことなど、この屋敷の使用人にさえも不快感が。最後まで責任もって育て、成長を見守る義務があると思うのですが、この父親はなんなんでしょうか。学生時代から冬はこもっていたとなれば、そのくらいの情報は入ってきていたのではないでしょうか。過去のことは戻らないけれど、レオナールの貴重な時間をヒートで苦しんでいたのが可愛そうでなりません。
ちょっと物足りないところがパトリック。パトリックは身分差から老男爵との婚約を断れなかったことを後悔していて、次は幸せな結婚をと考えているのはわかるのですが、ちょっとあっさりしているのかな……と。もう少しレオナールに絡んだりと壁になった方がスッキリした読了感があるのかもしれないなぁと思いました。