大木戸いずみの「歴史に残る悪女になるぞ」。コミカライズ化もしています。
- 領主であった両親祖父母の罪のために殺されたヒロイン
- ヒロインを裏切り謀反を犯し王族殺しとなったヒーロー
- 生まれ変わっても前世の罪を背負い償い続けようとするヒロイン
あらすじ
生まれ変わったら乙女ゲームの悪役令嬢になりたいと願い、転生したアリシア。綺麗ごとばかり言っているヒロインが嫌いだった。7歳になったとき、前世の記憶を思い出したアリシアは、前世で最もハマった乙女ゲームの悪役令嬢に生まれ変わったと知り「この世で一番の悪女になって歴史に残ってやる!」と勉強や剣技などの腕を磨きます。
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登場人物
シャーリー・ヒンス
恋人だったカイドに首を落とされた前世の記憶を持つ孤児。過去の罪を背負い、生きるための最低限の食事しかせず、他者と関わらないように生きている。修道院へ行くことを望んでいるが、1年だけ領主宅にメイドとして奉公させられることになる。
カイド・ファルア
極貧貴族の生まれ。密偵として潜入していたときに領主の娘”お嬢様”と恋仲になるが、謀反を起こし”お嬢様”を殺す。
もこもこの所感
シャーリーはもっと我儘になっていいし、今世で過去の罪を背負う必要はないのに、頑なに貫く姿に、シャーリーの素直さ、高潔さ、優しさを感じます。だからころ、両親も祖父母も”お嬢様”を大切に囲って育て綺麗なものしか見せなかったのだと思います。だからこそ、メイドや下使えの者に愛され大切にされていたのだとも言えます。
感想(ネタバレ含)
この作品は、あらすじなど何も読まずにまず第1巻をよんで欲しい!と思います。
“お嬢様”の死に「なんで?」と思いながら読み始めました。お嬢様は「何も知らなかった」のです。自領の民の生活も、突然いなくなるメイドや執事の理由も、両親や祖父母が何をしているのかも。みんなが大切に育てたお姫さまで、みんなに愛されていた。血縁だからといって殺さなければならない理由はないでしょう。というのは平和な日本で育った私だから感じることでしょうか。
お嬢様は使用人のヘルトと恋仲になります。ヘルトを心の底から愛していた。でもヘルトは初めから、領主一家を殺すために領主宅に密偵として潜入します。なんで、そういう使命を持ちながらお嬢様と恋仲になるのかな。恋愛はどうしようもないこととはいえ、その非情さにイラっとします。
王族の血を引くライウス領主一家を殺してなり替わるわけで、どのような状況であれお嬢様を殺さなければならなくなることは分かっていたでしょう。なんでお嬢様に近づいたのか。そして一緒に過ごしていて無関係なのはわかったことでしょう。
お嬢様は”何も知らなかった”ことを後悔します。何も知らなかったことが罪であると自覚します。だからこそ、自分で処刑台に昇った。生きていても自分が火種になることが分かっていたから。お嬢様でもわかったこと、カイドが分からないわけないですよね。
ということで、どうしても私はカイドが好きじゃないし、当て馬的な立ち位置で、別のヒーローが出てほしかったなと思っていました。そしてそうだと思いたかった。
が、ヒーローはカイドだった。
私は執念深いのか、どうしても「なんだその態度は」「ムカつくは」「生意気だ」などどついつい突っ込みたくなってしまいます。でもお嬢様はとっても愛していたから裏切られたことはショックで、でも同じくらい愛していたから絶望もしたのかなとおも思ったり。そしてすべてを受け入れることしかできなかったのかなとか。
領主に対する反感、崩壊寸前であった領を考えると”お嬢様”は死ぬしかなかったのかもしれませんが、あまりにも残酷で序盤から涙が流れました。